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アキレス腱炎
起こりやすいスポーツ:バスケットボール・陸上・サッカー・バレーボール・テニス

臨床的特徴

アキレス腱の遠位部、すなわち踵部付着部から5cm程度の間に発生する疼痛および周辺の腫脹、熱感を主症状とする。痛みは運動時に起こり安静時にはほとんどない。ときには非常に強い痛みを有することもあり、同部を軽く圧迫する程度でも痛みを訴えることがある。足部レントゲン像ではアキレス腱の踵骨付着部付近の腱内に石灰化や骨化がみられることもある。

引用:向井 直樹. 2008. 「【予防としてのスポーツ医学 スポーツ外傷・障害とその予防・再発予防】 スポーツ障害とその予防・再発予防 アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎 発症メカニズムとその予防・再発予防」『臨床スポーツ医学』 25巻臨増号: 277-80頁.

ジャンプ系、ダッシュ系、長時間のランニング系の運動が過度に繰り返されると微細断裂が亢進しアキレス腱に炎症が生じることがあり、これがアキレス腱炎である。

引用:堀居 昭. 1998. 『スポーツ障害別ストレッチング』太田 博編. 1.東京都: 杏林書院.

現場での処置

運動可能な軽症例では、運動前に十分なウオーミングアップと腓腹筋のストレッチングをすること、運動後にクーリングダウンとアイシングを励行することが

重要である。腱に瞬発的な衝撃の及ぶ運動は制限し、負荷の少ない運動に限定する。足底板やテーピングの使用も軽症例では有効なことがある。

引用:小出 清一・福林 徹・ 河野 一郎. 南江堂. 『スポーツ指導者のためのスポーツ医学』小出 清一・福林 徹・ 河野 一郎編. 2.東京都: 株式会社南江堂.

​アキレス腱炎で痛むところ

予防

​予防のためには、ヒールカップと呼ばれる装具を踵の下に装着して、アキレス腱の張力をゆるめます。

また、扁平足などの骨の並び方に異常がある場合は、装具治療を行うことがあります。

​ヒールカップ

立位によるストレッチング

図1、2は立位で行う腓腹筋とアキレス腱のストレッチである。

図1のように支持物に掴まり、足を肩幅に開き、両脚を伸ばしてポーズを取る。伸展させる方の脚の踵を床に

付けながら片脚を前に出すと、腓腹筋に伸展が感じられるようになる。軽く進展が感じられるところで

「楽な伸展」を約20秒間行う。

次いで、少し伸展を強めて行う「発展的伸展」は、少し腰を前方に出す代わりに支持脚を少し後方に下げても伸展を強めることができる。この方法で「発展的伸展」を約20秒間行う。どちらの方が良いかは選択して行う。

堀居 昭. 1998. 『スポーツ障害別ストレッチング』太田 博編. 1.東京都: 杏林書院.

図1

図2アキレス腱に進展を移行するアキレス腱のストレッチである。

図1よりも少し支持脚の足裏を前に移行し、ひざを曲げ、アキレス腱に伸展が感じられるようにする。少しアキレス腱に伸展が軽く感じられるところで「楽な伸展」を20秒間行う。次いで少しひざを深く曲げ、少し伸展が強く感じられるようにして「発展的伸展」を約20秒間行う​。

予防方法

⚫︎温熱と冷却
 運動の前に、ホットパックや、バイブラバスを利用し下腿部、アキレス腱部を温めてからトレーニングを行い、トレーニング後に下腿部に対して15分間ほどアイスマッサージを行う。また、入浴後には、下腿部、足底部のマッサージを10​分間ほど行い、アキレス腱周囲の筋群の柔軟性を維持しておく。(臨床スポーツ医学会p279)

図2

アキレス腱炎に対するアイスマッサージ

​ホットパック

⚫︎放置しておくと
​ きちんと治療をしないで無理にスポーツを続け、慢性化すると、なかなか治りません。早めに適切な治療を受けることをすすめます。

引用:日本整形外科学会. 2005. 『ケガをしたときのスポーツ医へのかかり方』日本整形外科学会編. 改訂第2版.東京都: 有限会社ブックハウス・エイチディ.

⚫︎シューズ
 シューズ選びにも注意を払わねばならない。ソール、ヒールカウンターが安定しているものを選び、ソールの内・外側が不均等に減ってきたら新しいものに交換して、不自然な負荷がアキレス腱にかからないようにする。

​ 前足部と後足部の動きが軟らかすぎたり固すぎたり

すると、足部の自然な動きができなくなるので、

クッション性だけでなく適度な足部安定性をもつ

シューズを選びたい。

⚫︎サーフェス

 練習や試合で使用するグラウンドあるいは、体育館の床などもアキレス腱炎・アキレス腱周囲炎の発症に関係があるので気をつける必要がある。特に、人工芝や、全天候の陸上競技場、ロードなどは非常に硬いので、ソールの厚いシューズにしたり、練習時間を短くしたりするなどの工夫が必要である。また、クロス

カントリーや野外走などの不整地でのウオーキング、ランニングでは、症状をより悪化させる可能性があるので完治していない場合は、不整地でのトレーニングは、実施すべきではない。(臨床スポーツ医学会p280)

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