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 野球肘

​起こりやすいスポーツ:野球・バレーボール・柔道/レスリング

 骨の成長期に、野球をする子供によくみられる障害です。小学生、中学生の時に発症し、ときどき将来のスポーツ活動に大きな影響を及ぼします。発生頻度も高くスポーツ障害としてはとても重要な疾患です。他のスポーツでは、やり投げなどでもみられます。少年野球やリトルリーグでは、投球フォームや筋力、バランスがしっかりしていないときに、投げ込みすぎたりして肘への負担が長く続くと、野球肘にかかりやすくなります。ボールを投げるとき、肘の内側(尺骨側)には引っ張られる力がかかり、外側(橈骨側)には圧迫力と捻りが加わります。それにより、内側では靭帯損傷が起こり肘がゆるくなり、故障を起こします。ときにはすぐそばの神経(尺骨神経)を傷め、前腕や手にしびれや筋力低下を起こします。外側では骨同士が摩擦を起こし、上腕骨の下端(上腕骨小頭)の骨や軟骨がはがれ、ときどきそれらは関節内を動き回り関節ネズミという障害を起こします(離断性骨軟骨炎:りだんせいこつなんこつえん)。

⚫︎治療

野球肘の初期症状は内側の尺側側副靭帯の損傷であることが

多く、この時期にしっかり治しておくことが望まれます。投球時に肘の内側に痛みを感じたり、動きが悪くなったときには

危険信号です。まずはスポーツ医を受診してください。適度な安静、ストレッチングなどで全快します。外側が痛いときは要注意です。骨や軟骨がはがれているときがあります。単純レントゲン撮影が必要です。たとえレントゲン撮影で変化がなくてもMRIなどで変化がみられることがるので疑わしいときはよく調べて

もらった方がよいでしょう。離断性骨軟骨炎になり、骨などが

はがれた状態はいろいろな程度がありますが、骨軟骨片が

引っかかってロッキングという症状を起こし、関節可動域の低下や激痛を生じるときには手術も必要な場合があります。

引用:日本整形外科学会. 2005. 『ケガをしたときのスポーツ医へのかかり方』日本整形外科学会編. 改訂第2版.東京都: 有限会社ブックハウス・エイチディ.

⚫︎予防

少年野球における投球基準

1.練習日数と時間については、小学生では週3日以内、1日2時間を超えないこと、中学生、高校生では週1日以上の休養日をとること、個々の選手の成長、体力と技術に応じた練習量と内容が望ましい。

2.全力投球数は、小学生では1日50球以内、試合を含めて週200球を超えないこと。中学生では

1日70球以内、週350球を超えないこと。高校生では1日100球以内、週500球を超えない

こと。1日2試合の登板は禁止すべきである。

3.シーズンオフを設け、野球以外のスポーツを楽しむ機会を与えることが望ましい。

(日本臨床スポーツ医学会、青少年の野球障害に対する提言より一部抜粋)研修整形外科

野球投球動作

予防ストレッチ

肘のストレッチング(内側)

​肘の内側から手のひらにかけての柔軟性を確認するには、腕を前方に伸ばして、手のひらを上にして指先を伸ばし、その指先を反対の手の指で掴んで下方へ軽く引きます。

この状態からさらに反対の手で抵抗を加えながら

5秒間保持してストレッチングします。

肘のストレッチング(外側)

​前方に伸ばした手を、手のひらがしたを向くように

ひねり、反対の手で甲を押さえて外側下方に軽くひねりを加えて確認します。ストレッチングするには、これに抵抗を加えて5秒間保持してください。いつもより硬いと感じたら、もう一度、内側のストレッチングをした後で、外側も繰り返します。

引用:堀居 昭. 1998. 『スポーツ障害別ストレッチング』太田 博編. 1.東京都: 杏林書院.

肘のアイシング

医師から安静を指示されたときの補助的なケアとして、あるいは痛みが消えて練習を再開した後の再発予防策として、アイシングが有効になります。

アイスパックを用いる場合の肘のアイシング

​ 痛みのある部位を中心に広めにアイスパックを当て、バンテージで圧迫・固定する。この際、圧迫を強くしすぎないように。強すぎると神経を刺激してしまい、痺れが生じる。

引用:山本 利春・ 吉永 孝徳. 2001. 『スポーツアイシング』1.東京都: 株式会社大修館書店.

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